前立腺がん検診の受診を考えている方へ(検診受診前にお読みください)
前立腺がんの情報・前立腺がん確定までの検診の方法
- 2007年には約10000人が前立腺がんで死亡していると推定されています。 また、前立腺がんは男性のがんの中で8番目の死亡原因となっています。
- 2020年には、前立腺がんの患者数は肺がんについで第2位となり、死亡数は2000年より約3倍増加すると予測されています。
- 前立腺がん検診は、住民検診や人間ドックなどで行われますが、血液検査のみで行うことが多く、前立腺特異抗原(PSA)を測ります。場合によって、補助的に直腸診を一緒に行います。
- 初期の前立腺がんには特有の自覚症状はありません。PSA検査(血液検査)あるいは直腸診を行わないと、見つけるのは難しいといわれています。
- 年齢が50歳以上になると、前立腺がんにかかる可能性が高くなることから、多くの住民検診では50歳からの検診受診が可能になっていますが、家族の方に前立腺がんにかかられた方がいる場合、前立腺がんになる危険が高くなるので、40歳からの検診受診がより勧められます。
- 40歳代での前立腺がん発見率は低いのですが、PSA値により、将来、前立腺がんになる危険性が予測できます。また、がんと診断された場合にはPSA値の変化が情報として非常に役立つ可能性が高いことから、40歳からの受診がより勧められます。(基本的に受診年齢に制約のない人間ドックでは)
- 異常値の場合:PSA検診の受診結果、約8%の方が異常値となります。
確定診断には前立腺生検が必要になります:前立腺の6~12か所(場合によってはそれ以上)に細い針を刺して組織を採ります。
- 前立腺生検について:局所麻酔あるいは腰椎麻酔をかけて行われ、外来検査で行う場合と入院検査で行う場合があります。
- 前立腺生検を行うと、約40%の方に前立腺がんが見つかりますが、PSA値が高いほどその確率は高くなり、PSA値が基準値(カットオフ値)を少し超えた方の場合には、がんが見つかる可能性は20%前後です。
前立腺がん検診の利点・欠点・不明確な点
利点
- PSA検査による前立腺がん検診の受診により、前立腺がん死亡率が下がることがわかっています。
- がんが転移した状態で発見される可能性が低くなります。
※何らかの排尿に関する症状が出てから発見される前立腺がんの約30%は、骨などに転移しています。
※生前に前立腺がんと診断されなくても、死後に病理解剖を行うと、いわゆる死亡に影響しない小さいがん(ラテントがんといいます)が30~50%の人に認められます。このような死亡に影響しない小さながんが、PSA検査や直腸診を用いた前立腺がん検診の中で発見されることもあります。
欠点・不明確な点
- PSAが上昇しない前立腺がんが2~3%あり、PSA検査では診断できないことがあります。
- 標準的な前立腺生検方法でも、20~30%の前立腺がんは見逃されてしまいますので、がんが見つからない場合も、注意深く経過観察をすることが必要です。
- 前立腺がん検診を行うと、治療により完治可能な前立腺がんが多く発見されますが、結果的に死亡に影響しないような"臨床的に重要ではないがん"が診断される(過剰診断)ことが、約10%の確率であります。
※"臨床的に重要ではないがん"の治療前の診断は一般的に困難です。ご高齢になれ ばなるほど、積極的な治療を行っても余命の延長が得られず、治療の合併症で生 活の質が低下(過剰治療)になる可能性があります。また、PSAの上昇が軽度 な状況で生検が施行され診断されたがんの悪性度が低く、かつ、がんの大きさ が小さい方においても、過剰治療となる可能性が懸念されます。
- 前立腺生検を行った場合、発熱、直腸からの出血、尿に血が混じる、精液に血が混じることがありますが、重い合併症は極めて稀です。
- PSA値が10.0ng/ml以下の方では、20~40%の方にがんが診断されます。 一方、60~80%の方はがんが診断されず、不必要な生検を受けることになります。
※PSA値が上昇するほどがんの可能性が高くなりますので、不必要な生検を受け る可能性は低くなります。
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